質問
<70代・女性>
はじめまして。
大阪市で皮膚科医をしております。ご相談したいのは母のことです。
因果関係は不明ですが、2021年6月、コロナワクチン2回目接種後より右膝関節及び左手関節の痛み腫れを自覚し、関節リウマチの診断を受けました。
発症時のCRP:4.19、MMP3:321.1 RF定量:156 でした。
5か月程度のメトトレキサート内服加療にて病態は改善せず、同年12月よりアクテムラの点滴治療を開始しました。程なくして炎症症状は改善し、その後軽度の肝機能障害がみられたためメトトレキサートは中止し、現在はアクテムラ点滴治療を8週間隔で投与しております。
CRPはここ2年以上正常値を維持しており、RF定量は120~200の間で増減を繰り返しております。直近のMMP3値は43です。
アクテムラ治療開始後、約3年半が経過し現在まで炎症所見の再燃もみられないため、先日主治医よりアクテムラ終了の打診をされました。
その際、再発の可能性は50%であること、今回の治療でアクテムラに対する抗体が形成されている可能性が高く、再発した場合は治療薬としてアクテムラの使用は難しいことを聞き、判断に迷っている次第です。
ドラッグフリー寛解にもっていけるのならば、母の治療ストレスも軽減し、また感染症罹患リスクの軽減にもつながるのであれば家族としてもありがたいのですが、一方で今回アクテムラが奏効し、副作用らしい症状も現在まで出ておりませんので、再発後アクテムラの使用が難しいとなると一抹の不安を拭えません。
篠原先生は、このような状況においてアクテムラを終了されることを推奨されますか?
また、ドラッグフリーの状態から再発をされた患者様の治療方針について可能な範囲で構いませんのでご教示いただけましたら幸いです。
ちなみに母は今年で73歳、軽度の認知障害があります。関節リウマチと同じタイミングで糖尿病を発症し現在内服加療中です。(HbA1c6.6)
お忙しい折恐縮ですが、よろしくお願い致します。
回答
関節リウマチは、自己免疫疾患です。
治療の最終目的は、寛解ですので、完治はありえません。
リウマチの治療は、薬を使ったうえでの寛解ですので、治療を終了するということは、原則的にはありません。
アクテムラでの治療は、点滴であれば4週毎になります。
お母様は8週毎ということですので、8週後にはアクテムラの存在はないと思われます。
となれば、今リウマチの活動性はない可能性があります。
そして、8週毎に点滴をされているため、運よく再発を防いでいるのかもしれません。
現在では、点滴投与することはほとんどなく、皮下注(1回/2週)もしくは自己注(1回/2週)が主流となっています。
アクテムラについてですが、他の生物製剤とは違い、一般的には中和抗体ができにくいとされているので、単独で使える薬です。
ですので、当初アクテムラにリウマトレックスを併用する必要はなかったということです。
今、アクテムラでの治療が効いているということは、アクテムラ抗体ができていないということです。
しばらく治療を止めても、リウマチが再発した時には、アクテムラ抗体はできていないので、アクテムラは効果が期待できると思います。
当院でも、アクテムラでの治療をしばらく休薬された後、リウマチが再発した患者さんがいました。
その際も、アクテムラでの治療を再開し、効果があり活動性を抑えることができています。
そのため、アクテムラ治療を中断すると次は使えない、ということは考えにくいと思われます。
リウマチSOSにてご相談の際は、検査データをお送りください。検査データがあれば、的確なアドバイスができます