リウマチの体質はないが、リウマチに似た症状がある

「セロネガティブリウマチ」と「リウマチ性多発筋痛症」

今回ご紹介するのは、診断結果に疑問を持たれて来院された、40代男性のケースです。

≪受診前の経過≫
2020年頃より、両膝の腫れや痛みを繰り返し、総合病院の整形外科で何度も関節液を穿刺してもらう。
2025年3月、両肩と両腕に激痛が出現。首や背中に痛みが出たため、同病院を受診。血液検査の結果、リウマチ因子(-)、抗CCP抗体(-)、CRPとMMP-3が上昇しているため、プレドニン10㎎/日が処方され、服用すると痛みは軽減した。
4月、基幹病院を紹介され受診。血液検査の結果、「末梢性脊椎関節炎かな」と言われ、リウマトレックス4c/週、プレドニン15㎎/日が開始となった。
6月の血液検査の結果、セロネガティブリウマチと診断された。
現在、リウマトレックス7c/週、フォリアミン1T/週、プレドニン(5)1T/日で治療しているが、今後生物製剤での治療に変更することを勧められた。
その際、「リウマチ性多発筋痛症ではないか、と聞いてみたが、担当医からは「リウマチ因子と抗CCP抗体が陰性で、右膝痛があり、年齢も該当しないので違う」と言われた。
しかし、本当にセロネガティブリウマチなのかという疑問は残り、当院ホームページを見て来院された。

≪当院初診時の炎症の有無≫
診察してみると、手術歴のある右膝が痛むため、左足でかばうので左膝に負担がかかっているようで、左膝には関節液が貯留していました。
これまで何度も関節液を穿刺されていたようですが、一度も調べることはなかったようです。今回は穿刺後、詳しく調べてみると、白血球とタンパクが多い滲出性の関節液で、炎症所見がみられました。

ここで、「セロネガティブリウマチ」と「リウマチ性多発筋痛症」についてみてみましょう

【セロネガティブリウマチ(血清反応陰性関節リウマチ)】

 ・リウマチ因子、抗CCP抗体、抗GAL欠損IgG抗体、すべて陰性
 ・炎症を示すCRPは正常範囲内もしくは陰性
 ・関節エコーで異常が確認できた場合
  *関節エコーでの異常は、MMP-3に反映されるため上昇する
 ・主な症状は関節痛

【リウマチ性多発筋痛症】

 ・リウマチ因子、抗CCP抗体、抗GAL欠損IgG抗体、すべて陰性
 ・炎症を示すCRP、滑膜炎を表すMMP-3、どちらも上昇
 ・50歳以上の中高年に多い(50歳未満での発症もある)
 ・主な症状は、発熱や頚部、肩、腰、大腿など四肢近位部(近位筋)の筋肉痛
  *手首や膝関節などにも関節炎が起きることもある

患者さんのデータは、

 ・リウマチ因子、抗CCP抗体はどちらも陰性
  *抗GAL欠損IgG抗体は当院にて検査し、陰性
 ・CRPとMMP-3は、どちらも異常高値

でした。

患者さんは、最初からCRPが上昇していますので、一目瞭然でリウマチ性多発筋痛症であることがわかります。
50歳以下はリウマチ性多発筋痛症にならない、とか、膝の関節痛はリウマチ性多発筋痛症では出現しない、という考えは、その担当医の間違った思い込みであったということがわかりました。

今回のような「セロネガティブリウマチ」や「リウマチ性多発筋痛症」などと言った病気は、リウマチを専門としていても、これらの「病名」そのものを知らない先生方もおられるようです。検査データが揃わなくても、MMP-3が上昇さえしていれば、すべて「関節リウマチ」と診断され、治療をされています。今後はしっかり理解して、治療していただきたいと願っています。
そして今は情報の時代です。患者さん自身が自分の病気について調べることが可能です。自分が受けている治療が、正しいかどうか、判断することが大切です。
担当医に頼らなくても、患者さんが自分で、リウマチかどうかを簡単に判断できる本を昨年出版しました。ぜひ活用していただければと思います。
『リウマチを止めるー完全寛解の時代到来!』(出版:知玄舎)  ーご購入はこちらー








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当院のリウマチ治療 リウマチSOS

執筆者プロフィール

篠原 佳年(しのはら よしとし)

1950年生まれ、徳島県池田町出身。岡山大学医学部大学院卒業後、岡山大学部第三内科を経て、現在、医療法人わいわい・クリニック理事長、医学博士。
膠原病、主に関節リウマチを専門としている。一早く生物学的製剤アクテムラを導入し、全国から多くの方が来院。現在まで約700例の実績。

その他の改善症例につきましては、院長著書『リウマチが治った』『リウマチが治った②』『リウマチを止める――完全寛解の時代到来!!』をお読みください。
多数の方が、どのようにして改善したのかが詳しく書かれています。




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  68. 本当にリウマチ?

  69. リウマチではないのに治療するなんて

  70. リウマチ因子も炎症所見もない。それなのにリウマチ?

  71. 全くリウマチは認められない

  72. 診断基準を満たしていないのに治療?

  73. 炎症もはっきりしないのに、リウマトレックスは不必要。生物製剤はまったく必要ない。

    炎症もはっきりしないのに、リウマトレックスは不必要。生物製剤はまったく必要ない。

  74. 成人スチル病と診断されるまで

  75. 総合病院で病名が告げられないまま、リウマチの治療をされていた

  76. 実は多い!リウマチ性多発筋痛症

  77. リウマチ因子、抗CCP抗体マイナス。MMP-3(滑膜炎)のみ上昇。

交通アクセス

わいわいクリニック 外観写真

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休診日 / 木曜・日曜・祝日

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